動揺している。
動揺しているので、今日は簡潔に書いておこう。
お前は今、乾燥キクラゲを戻しているだろう?
暗くて艶っぽいの。
落としたと思ってる?シンクに。
この手のキッチンシンク。
このへん。
キクラゲ落ちたかな。
顔を近づけるな。
もう一度言うぞ。顔を近づけるな。
お前はもっと自分を信じるべきだった。
お前はキクラゲを落としてない。落としてなんてないんだ。
そいつは、そいつは虫だ。
キクラゲじゃない、虫だ。
虫の中でも、セミでもない、蚊でもない。蛾でもなければ蝶でもない。
ゴキブリだ。Gだ。
そうだ言ってみろ、ゴキブリだ。親指くらいの。
だかお前は有能だ。
叫び声ひとつ上げず、黙って息を呑んで、キッチンに常備してある殺虫剤で、無駄な動きなく抹殺に成功した。
動揺おさまらずスープも麺も盛り付けを盛大にこぼしたが気にするな。
いつか幸せが訪れる。
そうだ。動揺したせいで、ビスケットを平らげたんだ。ぜんぶゴキブリのせいだ、きっと太らない。安心しろ。
震えて眠れ。