多分に漏れず、関東の片田舎生まれ育った私は子どもの頃秘密基地を作っていた。
家の近所には朽ち果てそうな空き家や、竹藪、雑木林が多々あり、子どもがなんちゃって秘密基地を作るための素材には事欠かない。
そんなわけないのに、あの空き家は泥棒の家であっただの、ここでは殺人事件があっただの、子どもたちの間で噂をし、そして現地を視察する日々。
そのうちの1箇所、ある竹藪に(今となっては何だったのかよくわからない、単に廃棄物を違法に放置した場所だったのかもしれない)トタンやブロックが重なったようなスペースを発見した我々は、
さっそくそこを秘密基地にするとした。
時期はたしか11月くらい。
あれから私たちは毎日のように秘密基地に集合した。特に何をするでも無い。
ただおしゃべりしたり、紙とペンを持ち込み、その場で絵を描いたりするだけ。
部屋でやれ。なのだが、それが秘密基地なのだ。
テンションがあがりきっているので、秘密基地のテーマの作詞にも余念がない。
ここには到底書けない歌詞の。いまだに記憶している歌詞には、下品なワード満載だ。
この歌詞は紙に書いて、ブロックの下に隠した。
しかし、このような屋外露出秘密基地は長続きしない。
前述の通り、時期は11月。
屋外でじっとしていてもあまり体に堪えないし、雨も少ない。
これが、真冬だったら。寒くてたまらないだろう。
梅雨だったら基地に居ても何もできない。
真夏だったら虫だらけ。蚊にやられすぎて半泣きだ。
そう。11月頃に作ったこの秘密基地は真冬になる頃には忘れ去られ、以降一度たりとも訪れていない。
20年以上の時を経て昨日突然思い出した秘密基地、替え歌の歌詞カードが経年劣化により朽ち果てていることを祈るのみなのだ。