誰かの感情に思いを馳せるのはとても大切なことである。
いつの時代も私たち人類は、誰かの悲喜劇に自らの感情を重ね、泣いたり笑ったりする。
音楽は揺さぶられた感情をさらにドラマチックに盛り立てる。
先人たちは、美しい物語には美しい音楽を合わせることで最高のマリアージュが生まれることを知っていたに違いない。
オペラだ。
とても良いのであるが、一言物申したい。
話が暗い。
みんなすぐ死ぬし、すぐ死ぬって言う。
あの人と結ばれない→死ぬ。
無実を晴らして→死ぬ。
最後に忠誠を示して→死ぬ。
身代わりに→死ぬ。
愛→死ぬ。
病気で→死ぬ。
その愛に気付いたとしても時既に遅し。
…
…
…
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椿姫とか、ロミオとジュリエットとか、リゴレット(これ個人的にドイヒーオブドイヒー)とか、トスカとか。アイーダだってそう。
理由は分かっている。
オペラはたしか、悲劇が正統なのだ。
(正しくはギリシャ悲劇)
もしかしたら、死=神の元へ、天国へ、的な宗教観もあるのかもしれない。
それにしても暗い。
祖父が音楽野郎だった私がテレビで初めて見たオペラは『蝶々夫人』。6歳くらい。
このチョイス、6歳にはなかなかエグい。
〜あいまいあらすじ〜
舞台は日本。
開国した日本に仕事で来たアメリカ軍人と、美しい芸者の女性である蝶々さんが結婚。
アメリカ軍人仕事を終えて帰国。この後子どもが産まれる。
軍人、帰国したら帰国したでアメリカ人の女性とふつうに結婚。
蝶々夫人、捨てられる。しかも子どもまで奪われる段取り。絶望。自殺。
あああああああああああああ
悪いのは皆軍人なのに、なぜ蝶々夫人が死ななくてはならないのか。なぜ苦しむべき軍人がのうのうと生き続けるのか。何の罪もない子どもは、なぜ母親を奪われなければならなかったのか…!!
愛とは、誠意とは。
神は、神は死んだか。死んだのか…!
では、お楽しみください。蝶々夫人です。